フリープランは「登録不要」ではなかった — 同じページの中で矛盾していた LP 文言を直す
経緯
外部のマーケティング診断で、LP(ランディングページ)の FAQ に矛盾があると指摘を受けた。実際にコードと LP の記載を照らし合わせて確認したところ、指摘は事実だった。
同じページの中に、次の 2 つの記述が同居していた。
- クイックスタートのステップ 2: 「メールアドレスで無料登録」
- FAQ の回答: 「フリープランは登録不要で、1サイト・月3回まで無料でお使いいただけます」
片方は「登録してください」と案内し、もう片方は「登録は不要」と言っている。実装を確認すると、フリープランは初回起動時にメールアドレスの登録と認証が必須で、これを済ませないと利用できない。FAQ の「登録不要」は事実と異なっていた。
「無料」と「登録不要」を混同していた
矛盾の根っこを辿ると、2 つの独立した軸を 1 つの言葉に押し込めていたことに行き着く。
- 費用の軸: クレジットカードは不要・料金は発生しない
- 手続きの軸: メールアドレスの登録という 1 ステップは必要
この製品では両方とも「フリープラン」の特徴として真実だが、「登録不要」という言葉は手続きの軸まで否定してしまう。おそらく機能追加の過程で「クレジットカード登録は不要」という説明が、いつの間にか「(あらゆる)登録は不要」に短縮されて定着したと考えられる。文言は一度書いたら完成ではなく、その裏側の実装が変わるたびに事実として正しいままかを再確認する対象だ、ということを改めて認識させられた。
見つけた通りに直さない
修正の選択肢は 2 つあった。
- FAQ の「登録不要」という表現をそのまま守り、実装(メール登録必須)の方をなくす
- 実装はそのままに、FAQ の文言を実態に合わせて書き直す
メールアドレスの登録は、認証メールの到達性やライセンス管理の基盤になっており、なくす選択肢は現実的ではない。今回は 2 の「文言を実態に合わせる」方針を取った。
- フリープランは登録不要で、1サイト・月3回まで無料でお使いいただけます。
+ フリープランはメールアドレスの登録だけで、1サイト・月3回まで無料でお使いいただけます
+ (クレジットカード不要・期限なし)。
ポイントは、単に「登録不要」を削るだけでなく、費用の軸(クレジットカード不要・期限なし)を明示的に残したことだ。ユーザーが本当に知りたいのは「クレジットカードを求められるのか」「いつまで無料なのか」であることが多い。この 2 点をきちんと肯定しつつ、手続きの軸(メールアドレス登録は必要)だけを正確に書き直すことで、誇張にも過少申告にもならない表現に落ち着いた。
同じ文言はクイックスタートの説明文にもあった。
- クレジットカード不要。インストールするだけで今すぐ開始。フリープランはずっと無料。
+ クレジットカード不要。メールアドレスの登録だけで今すぐ開始。フリープランはずっと無料。
日本語版と英語版、FAQ ページとトップページの重複箇所を含め、計 3 ファイル・4 箇所を同じ文言に統一した。
直さなかったもの
同じ監査の過程で、もう一つの表記ゆれに気づいた。製品名が「WP Maintenance Manager」と「WP Maintenance Pro」の 2 通りで LP 上に混在していた実体だ。配布しているバイナリの実体名は “WP Maintenance Pro” 側であり、もし LP だけを “Manager” に統一してしまうと、今度は LP と配布物の名前が食い違うという逆方向の矛盾を新たに作ってしまう。
この場では手を付けず、別途リネーム方針の判断が必要な課題として切り分けた。1 回の修正コミットで見つかった不整合を全部まとめて直そうとすると、影響範囲の異なる問題が一つの変更に混ざり、どちらかを中途半端にしてしまうリスクがある。「登録不要」の矛盾は文言だけの修正で完結する一方、製品名の表記ゆれはバイナリ名・インストーラー・過去の配布物にまで影響が及ぶ別種の意思決定であるため、意図的にスコープを分けた。
まとめ
LP のコピーは、書いた時点では正しくても、その後の実装変更(この場合はメール認証フローの追加)に追従できず、静かに事実と乖離していくことがある。今回の発見は外部からの指摘がきっかけだったが、根本的な予防策は「LP の記載を実装と突き合わせて定期的に事実確認する」監査の習慣そのものだ。見つかった不整合をその場で全部まとめて解消しようとせず、性質の異なる問題は別のタイミングに切り分ける判断も、修正そのものと同じくらい重要だった。